top of page

デザイナーのバーンアウト①燃え尽き症候群を“治す”のではなく“共に過ごす”方法

  • 執筆者の写真: Aya
    Aya
  • 5月27日
  • 読了時間: 8分

更新日:5月31日

デザイナーやクリエイターなら、多くの人が経験する燃え尽き症候群(バーンアウト)。現役フリーランスのデザイナーが実際に燃え尽き症候群になったタイミングと「乗り越え方」ならぬ「共に過ごす」向き合い方をご紹介します。

暗い背景の中に、火が灯ったキャンドルを両手で包むように描いた優しいイラスト。左右には草花や星が散りばめられている。上部には『デザイナーのバーンアウト #1 燃え尽き症候群を“治す”のではなく“共に過ごす”方法』という日本語のメッセージが書かれており、下部には“LITTLE FUJI DESIGN STUDIO”のロゴがある。


  1. デザイナーが燃え尽き症候群(バーンアウト)を経験するタイミング


デザイナーとしてのキャリアをはじめて早6年ほど経ちますが、これまでに2-3回ほど燃え尽き症候群のような時期を経験してきました。


幸いにも数ヶ月でそういった時期を乗り越えてきましたが、そのような「燃え尽きて何もしたくない」「アウトプット続きで疲れた、もう何もアイデアが浮かばない」というような時は、毎回いつも決まって「めちゃくちゃ忙しい時期を越えた後」に発生します。


最近でいうと、過去最高の売り上げを記録した月(=案件数も多く多忙を極めた時期)の1か月後くらいにやってきました。


『完全に燃え尽きた』というよりは、多くの案件がひと段落したタイミングで、ようやく一息ついている休憩地点にやっと腰かけた…という状態に近かったです。

がむしゃらに走り続けて、過ぎてみればあっという間だったけれど、気が付いたら両足筋肉痛で、もう一歩も歩きたくない!という状態をイメージしていただければと思います。笑


案件が重なって忙しかったということは、それだけアウトプットをし続けた、ということです。


次々とくる依頼はもちろん、そのハイになっている状態で燃え上がったモチベーションを活かして同時進行で自主作品も作り、短い時間でデザインを生み出し続ける。このクリエイティブ(生み出す、創造する)という行為は、精神的にものすごくエネルギーを消費する行為です。


「デスクに突っ伏して眠っているデザイナー風の人物。モニターには家の3Dモデルのような図面が表示されており、横にはコーヒーカップが置かれている。人物の上にはぐちゃぐちゃの線でストレスや混乱を表現している。

仕事の最中やデザインを考えている・形にしている時間のほとんどは楽しくて、あっという間に過ぎていきます。終わった後少しして、ようやく思い出したかのようにどっと疲れがくるのです。自分でも気が付かないほどに。


これは、デザイナーという職業のほか、作品を作り続けるアーティスト・クリエイターにとっては避けられない時期でもあると思います。


『常にアイデアが生まれて、手が止まらない!』という、バーンアウトを一度も経験しない人も中にはいるかもしれませんが、そういった人は極めて稀なケースではないでしょうか。


  1. 突発型とじわじわ型、異なる燃え尽き症候群の始まりとは


私の場合、この燃え尽き症候群は急にドカン!とくることもあるし、じわじわ~っとくる時もあります。


●突発型のバーンアウト


突発的にドカン!と来たときは、数日間あるいは1週間まったく仕事をしない、「完全オフ」な時間をとり、デジタルデトックスをして徹底的に休むことで、そろそろ仕事するか、何か作ってみるかという気持ちになります。


特にフリーランスは会社員と違い、決まった休みや残業とという概念がほとんどないので、休むのを忘れてほぼ一カ月毎日働いていた…なんてことは珍しくありません。

(そもそもフリーランスという職業は、自分の仕事が好き、働くのが好きという人が多い気がします)


●じわじわ型のバーンアウト


逆に、じわじわくるときの方が長引く傾向にあります。

始まりと同じく、終わりもじんわりと、緩やかに脱するという感覚に近いです。


こういったじわじわ型の燃え尽き症候群、あるいはスランプの時期は、自分と向き合う内省の時間として実はとても貴重な時期でもあるのではないでしょうか。


出し切って、考え切って、絞り切って、まるで抜け殻のようになったとき、果たして何が残っていますか?


何も残っていないと感じるほど空っぽなときこそ、次に少しでもきらめきを感じた、あるいは心が動かされた瞬間をより鮮明に覚えていたり、新鮮な気持ちで見つけることができるのです。



  1. 自分と向き合う静かな時間の中こそ、見つけられるもの

それはまるで、自分の心の中に深い海があって、静かに沈み続けていくような感じに似ています。

私はダイビングの経験があるのですが、まさにある一定の深さまで行くと、勝手に体がすーっと沈んでいくような感覚にそっくりです。


その瞬間は真下に延々と続くような深い青に、不安や恐怖を抱くと同時に、どこか心地よさやある種の安心感も感じる不思議な感覚です。賑やかな外の世界から離れて、自分の呼吸の音だけが響く静かな世界に、体が溶け込んでいくのです。


燃え尽き症候群でそのような気持ちになった時は、もがいてみて、上に浮上しようと試行錯誤することもあります。あるいは、身を任せて潜れるところまで沈み切り、深海の静けさに居座った後、『そろそろ飽きてきたな』と感じた瞬間にふと上を見上げてみると、自分がたどってきた道や遠くに見える水面に目が留まります。


そうして、一つひとつ思い出していくのです。


自分は何が好きだったんだっけ。

褒められてうれしかったことはなんだろう。自分が大切にしたいものはなんだろう。

自分の心が動かされるものはなんだろう。


丁寧に、ゆっくりとなぞっていくように。あるいは宝箱一杯に詰め込みすぎて、箱の外にはみ出て散らばってしまった宝物をひとつひとつ拾い上げ、本当に自分が大切に持っていたいものかを振り返って整理していくのです。


  1. デジタルデトックスで周りから距離を置いてみる


燃え尽き症候群を自分の中に感じた時は、なるべくデジタルコンテンツ(動画や画像)は見ないようにしています。

それよりも、今目の前に広がる現実世界、自分の身の回りにあるもの、外に出て吸う空気や五感で確かに感じることのできる風、景色、音などの自然に目を向けてみます。


なだらかな山々を背景に、川が流れる草原と花畑の風景。手前にはデイジーのような白い花とピンクの草花が咲き、空は淡い紫色に染まっている

スマホあるいはPC画面に表示される画像や動画は、あまりにも情報量が多すぎるからです。


自分の頭の中で一度に処理できるだけの情報をゆっくり飲み込んでいく。あるいは、自分の意思で見るかどうか判断できるコンテンツだけを消費していきます。本を読み、想像力を働かせ、自分の感受性にもう一度触れて確かめていきます。


そうして得た情報や気づいた自分の価値感、考えを、文字として書き記していくことも効果的です。このブログや、あるいはノートに書くこともあります。単語でも構いません。


文字に起こす、という行為自体に意味があるのです。



  1. 再び「つくりたい」気持ちとモチベーションを取り戻すまで


自分の頭の中でその時感じた、思い浮かんだ言葉を文字にして残す、言語化するという行為は、ごちゃごちゃして散らかった頭の中や、もやもや霧がかかったような気持ちの中で目印になっていきます。


そうして書き起こしていった言葉は、自分というフィルターを通して出てきた言葉でもあります。特に紙に書くという行為は、私の場合、キーボードで文字を入力するよりも頭に残りやすいです。

自分の文字の癖や、言語化する能力、自分の頭の中の引き出しにある言葉が文字として視覚化され、実際に触れる物として確かにそこにあります。


この静かに自分の内面と向き合う時間こそが、自分の知らない自分に出会う旅になるのです。


分析心理学を創始したスイスの精神科医・心理学者、カール・グスタフ・ユングの言葉に、まさにそんな瞬間を言い表したものがありました。


"Who looks outside, dreams; who looks inside, awakes." 「外を見れば夢を見る。内を見れば目覚める。」 — Carl Jung カール・グスタフ・ユング

他の人のことばかりを気にしていると、憧れたり、羨んだり、妬んだり、『自分もこの人のようになれるんじゃないか』と夢を見ます。

しかしそんな状態になってしまうと、本当の自分は見失いがちで、ベクトルが他人ばかりにいってしまい、自分という現実を見ず、夢の中にいるに過ぎないのです。


内を見ることで、自分という軸にはじめて目が向きます。ひたすら自分の中に広がる世界を探求し、自分の価値観や本当にやりたかったこと、好きなこと、自分の意思に触れて、ようやく目覚めることができるのではないでしょうか。


自分自身と向き合うことは、時にはとても怖かったり眼をそむけたくなる、認めたくない時もあります。だからこそアーティストやクリエイターは、作品を通じて自分自身を投影したり、まさに身を削る想いで生み出し続けているのだな、と改めて思うのです。


私自身、デザイナーとしてデザインを作り続ける、生み出し続けることは決して簡単なことではありませんが、自分の体験や価値観・私というフィルターを通して捉えたものをデザインという形で視覚化し、誰かに届け、それに価値として対価をいただくデザイナーという仕事はまさに天職であり、つまずくことはあれど一生続けていきたいと思います。


デザイナーであることは、クライアントやエンドユーザーはもちろん、常に『自分』と対話することなのかもしれません。


もしあなたが今、燃え尽き症候群やバーンアウトを感じているのなら、どうか自分の声に静かに耳を傾けてみてください。 その奥に、次の「つくりたい」気持ちが眠っているかもしれません。


★この記事の続きはこちらから↓


Comments


bottom of page